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緊急を要する場面では、部下もイニシアティブが必要だ!

経験豊かなリーダーが冷静的確な判断をしつつ、イニシアティブを取って組織を導くのであればいいのですが、

ぼんくらリーダーが立場上止むを得ずイニシアティブを取り、トンチンカンな方向に組織を導いたならばそれは悲劇です。戦時や災害時であれば大惨事を引き起こすこともあり、イニシアティブは状況を悪化させる余計な「武器」となります。

戦争を描いたハリウッド映画によくあるシーンで、兵学校出のエリート上官とたたき上げの軍曹クラスが戦局判断で対立し、軍曹は「あんたの言うことを聞いていると部隊は全滅だ」と言い結局彼がイニシアティブを取って正しい方向に組織を導くというものがあります。軍隊という上官命令至上主義的組織においても「正しい主張をする者がイニシアティブを取るべきで、上官だからとそれを振り回すことは組織を危険に陥れる」というある種寓話的なエピソードの描き方です。

では前記の軍曹のようなイニシアティブの移譲、下克上が許される要素は何でしょうか。それは彼の持つ豊富な戦場経験が周囲への説得力として力を持ったはずです。イニシアティブにはバックボーンとなる「力」が必要です。それはたいていの場合、立場からくる「責任を担うので指示できる権力」ですが、軍曹のように「経験しているので判断に自信が持てる態度=周囲への説得力」の場合もあります。
そこには①周囲を圧倒する自信満々の態度②彼の経験から納得できる論理性の2点があり、それにより彼はイニシアティブを取ることができるのです。

ただ世の中そう単純にいかない場合もあります。あるエピソードを紹介しましょう。

もう二十年近く前、当時出版社のサラリーマンだった私はある大物タレントのサイン会のお手伝いに駆り出されました。そのタレントはテレビドラマの主演を何本もこなすほどの人気だったのですが、会社側は彼女の人気を過小評価し駅の公共スペースをサイン会の会場にしようとしていました。しかし開始1時間前から信じられないような数の人が集まり駅全体が大群衆でもみ合う状態になったのです。運悪く通勤ラッシュの時間とも重なり人の密度は刻々と増しもはやパニック状態でした。下手すると圧死者も出かねない大変危険な状況で当然サイン会の中止を考えるべきところに追い込まれたのです。

ところが中止をほのめかすとファンは騒然とし群集心理から暴動しそうな勢いでした。もう会社の偉い人、イベント会社、駅員誰もがどうしていいのか判断がつかない状況でした。そこで、元来非常事態にワクワクしてしまう悪癖の私は次のように進言しました。「このままでは危険です。○×部長(低い声に押し出しがきく恐持ての部長です)、マイクを取って『サイン会を予定通り行うから整然と並んでくれ、まず一般の人が通れる道を空けてくれ、その道ができたならばそこからタレントを入れる。言うことを聞かないとサイン会は即刻中止する』と言って下さい。条件を出せば彼らも言うことを聞くはずです。」と。部長は「本当にそれで大丈夫か」と私に尋ねてきましたが、私は「大丈夫です。必ず収まります。」と自信満々に返事をしました。その部長はイベントの責任者でも何でもありません。ただ一喝するに相応しい人物だったのです。私と言えばもちろん平社員で何ら権限もありませんでしたが、このとき私は事態のイニシアティブを取ったのです。部長は私が言う通り発言し、群集は私の意図したかたちで道をつくりました。作戦は成功したかに見えました。

が、ちょっとしたきっかけでファンがタレントに殺到し、彼女はとんでもなくもみくちゃにされ、またもやパニックになってしまいました。結局会場を別なところに移すことで事態は収拾されたのですが、そのタレント及び事務所がカンカンになって怒ったことは言うまでもありません。果たして私の作戦は成功だったか失敗だったか何だかよくわかりませんでした。

このエピソードで私が得た教訓は、非常事態においては立場、序列などを越え自信を持って主張する者がイニシアティブを取ることができるということと、であるからそれをする者は殊更慎重に組織を導かなくてはいけないという二つです。四十、五十を過ぎた責任ある管理職の方々も自信満々の二十代の若造の意見に従ったという事実は、イニシアティブという概念の強さ、大きさを示す証左ではないでしょうか。やはりイニシアティブは諸刃の刃です。それを使う者はそこを強く認識すべきでしょう。

著:古波倉 正人→360サポーターズ


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