SHIFT(ITサービス会社)に学べるところ、真似してはいけないところ
SHIFT(ITサービス会社)に学べるところ、真似してはいけないところ
日経ビジネス2025.04.14は「SHIFTの革命 人的資本経営を極めよ」という特集だ。
SHIFTさんにしかできない、人事管理の特徴はこうだと感じた。
1. 450項目を超える社員データの収集
2. 年間延べ1,200時間の評価会議
人の評価をAIやITでサクッと済ませようとする組織も増えつつある今日。評価会議を重ね、そこまでして私たちのことを見極めようとしてくれている、という安心感は強いはずだ。
1,200時間も投入することはできなくても、評価会議そのものをしっかりやる、ということは大切だ。どの会社でも実践できるはずだし、社員に安心感もたらし、会社や上司への信頼感を高める効果も高い。
しかしながら、「450項目を超える社員データの収集」という点は、普通の会社は、真似しない方が良い。そもそも人事担当を普通の会社の4倍おける、という前提条件が違う。
一方、450項目の中には、多くの会社でも採用している「思考行動特性(コンピテンシーと呼ばれることが多い)」という項目もあれば、「社内アンケートの平均回答時間」、「社内飲み会の頻度」など、そこまで必要?と思わる項目も含まれる。
一般的に、評価の項目数が増えれば増えるほど、それに関わる評価情報の収集時間が必要になる。が、実際的に、全て丁寧にやりきれない。つまり中途半端な情報や、評価期間対象外の古くて目立った情報(過去の大きな失敗や大きな成功が印象に残る)に基づく評価、ということにならざるを得ない。
また評価盲目としては増やすのは簡単だが、それぞれの基準作り(何をもって5点満点なら5点、4点にするのかという基準)、その改定が大変になる。
また評価項目の何を重視して、何は参考程度にするのか、という評価項目間の重み付け(ウエイト設定)も必要だし、それを社員に明示しなければ、会社の期待通りに動いてはくれない。
結果として、事実に基づかない評価会議。声の大きい人の意見に流されて評価が決定。ということが起こりがちだ。従って社員は、評価会議で声の大きい人の機嫌を伺う行動はとるが、顧客ニーズや業務上の必要性から起こす行動(特に中期的な課題)は後回しになりやすい。
強力なビジネスモデルを作り上げ、強力な創業者のいらっしゃるSHIFTさんにはできるかもしれないが、普通の会社が一部分だけ真似すると怪我をする。
また仕事に関わることだけを評価しましょう、という世界のトレンドとも相反する。多くの会社が目指すのは、本当に仕事に必要な評価項目を厳選する。その評価項目の意味や基準やじっくり検討して明文化する。評価者に評価基準を徹底するのはもちろん、可能な限り社員にも伝えて、必要な行動を引き出す、というのが合っているはずだ。