AIで仕事がなくなるのに人手不足なのはなぜ? ~「人が余る」と「人が足りない」が同時に起きる採用市場~
生成AIの普及によって、私たちの働き方は急速に変わり始めています。
文章作成、資料作成、データ分析、問い合わせ対応など、これまで人が時間をかけて行っていた仕事の一部をAIが担えるようになりました。
実際、2026年にはAI活用を理由として新規採用を抑制する方針を示す企業も現れています。各メディアが銀行の新規採用がAI活用を理由に大幅抑制を表明したことなどが取り上げられています。
こうしたニュースを見ると、「これから人の仕事はどんどんなくなるのではないか」と考えてしまいます。
ところが、その一方で日本企業から聞こえてくるのは、
- 「人が採れない」
- 「現場の人手が足りない」
- 「採用しても応募が来ない」
という声です。
2026年6月の有効求人倍率も1.18倍と、求人数が求職者数を上回る状態が続いています。
AIによって仕事がなくなると言われているのに、なぜ企業は人手不足なのでしょうか。
一見すると矛盾しているようですが、この二つは同時に起こり得ます。
なくなる仕事と足りない仕事が違う
この問題を考えるうえで重要なのは、「仕事」というものを一つにまとめて考えないことです。
AIが得意としているのは、例えば、
- 情報を整理する
- 文書を作成する
- データを集計する
- 定型的な問い合わせに回答する
- パターンから一定の判断を行う
といった業務です。
そのため、ホワイトカラーの一部では、これまで5人で行っていた仕事を3人で対応できる、といったことが今後増えていく可能性があります。
一方で、
- 建設
- 介護
- 外食
- 物流
など、現場で身体を動かしたり、人と直接関わったりする仕事では、依然として深刻な人手不足が続いています。
地方のブルーカラー職では依然として人手不足が続き、企業が給与水準を引き上げて採用しようとしている状況が紹介されています。
つまり、AIによって人が余る仕事と、人が不足している仕事が別々に存在しているということです。
AIは「仕事」を丸ごとなくすとは限らない
もう一つ考えておきたいのが、「AIに仕事を奪われる」という表現です。
実際には、職業そのものが突然なくなるというよりも、一つの職業の中にある一部の業務がAIへ移っていくケースの方が現実的です。
例えば人事担当者であれば、
- 求人原稿の作成
- 応募者へのメール
- 面接日程の調整
- 資料作成
などはAIによって効率化できます。
しかし、
- 「この応募者を採用するべきか」
- 「この社員をどこへ配置するべきか」
- 「本人がなぜ悩んでいるのか」
といった判断まで、すべて機械に任せられるわけではありません。
AIは必ずしも「人を減らすための技術」ではなく、少ない人数でも仕事を回すための技術として活用される可能性も高いのです。
これから起きるのは「人数不足」より「人材のミスマッチ」
そこで重要になるのが、採用市場におけるミスマッチです。
企業が欲しい人材と、求職者が持っている能力が一致しなければ、「仕事を探している人はいるのに、企業は採用できない」という現象が起こります。
例えば企業が、「AIを使って業務改善ができる人」を求めている一方で、「決められた作業を正確にこなすこと」を得意とする人材が市場に多ければ、単純な人数としては人材が存在していても採用は難しくなります。
これからの採用難は、「人がいない」という問題から、「必要な能力を持った人がいない」という問題へ変化していくのかもしれません。
AI時代だからこそ、人間に求められる能力も変わる
では、AI時代にはどのような人材が求められるのでしょうか。
単純にAIを操作できればいい、という話ではありません。
例えば、
- 何が問題なのかを考える力
- AIの回答が正しいか判断する力
- 相手の状況を理解する力
- 周囲と協力する力
- 新しい環境に適応する力
といった能力は、むしろ重要になる可能性があります。
つまり、これから採用する側も、「何ができる人を採りたいのか」をこれまで以上に明確にしなければなりません。
人事が考えるべきこと
AI時代の採用で重要なのは、「AIによって何人減らせるか」だけを考えることではありません。
むしろ、「AIに任せる仕事」と「人に任せる仕事」を整理することが先ではないでしょうか。
そのうえで、「これから自社で必要になる人材はどのような人なのか」を改めて考える必要があります。
これまで活躍していた人と、これから活躍する人が同じとは限りません。
採用基準そのものを見直す時期に来ているとも言えます。
まとめ
AIによって仕事がなくなる。
一方で企業は人手不足に悩んでいます。
この二つは矛盾しているように見えますが、実際には、「余る仕事」と「不足する仕事」が違うと考えれば理解できます。
「どのような能力を持った人がいるか」が企業の競争力を左右するようになるでしょう。
文責:田辺顕
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