ミスを記録する~失敗を価値に変える組織づくり~
「ミスをカバーできれば一人前」という考え方は、すでに時代遅れになりつつあります。この「カバーする」という言葉がもたらすのは必ずしも善意だけではなく、改善策の提案が行われないことやミスの隠ぺいなど悪癖もまた存在しています。これからの時代に必要なのは、「失敗を正しく記録し、次に活かす力」です。
失敗例
たとえば営業の現場では、
- 失敗した提案内容が記録されず、なかったことにされる
- フォローが途絶えたリード案件が誰にも引き継がれない
- 失注理由(価格、競合、製品スペックなど)がシステムに残らない
また、実験や製造の現場でも、
- うまくいかなかった条件は、個人のノートにメモされるだけ
- 不良品が多く出た操業条件が、担当者の記憶にしか残らない
こうした属人化された失敗情報は、組織の学びにならず、結果として"同じ失敗の繰り返し"を招きます。
解決のカギは「失敗の仕組み化」
ミスや失敗を「データ」として活かすために、企業として取り組むべきは以下のような仕組みづくりです。
1. 失敗事例の記録フォーマットを用意する
なぜうまくいかなかったのか、何を試したのか、何が足りなかったのかを記録する専用のテンプレートを整備します。営業日報、製造日誌、実験ログなど、日々の業務に自然に組み込む形が有効です。
2. 共有の場を仕組みとして設ける
失敗を隠すのではなく「知見」として持ち寄るために、定例会議やナレッジ共有会で「うまくいかなかった事例」も取り上げる文化をつくります。
3. 評価制度に「記録・共有」を含める
失敗を記録し、オープンにする行動自体をポジティブに評価する項目を人事制度に盛り込むことで、「隠すより開示する」行動を後押しします。
4. ナレッジベースの活用
属人的な情報を組織の資産とするため、失敗や気づきをまとめたデータベースを整備し、誰でも検索・参照できるようにします。
「ミスを記録できる人」こそが、これからの"一人前"
失敗を正しく記録し、組織で共有・活用できる人材こそが、現代のビジネスにおける「一人前」です。
大切なのは、"うまくいかなかったこと"を恥じるのではなく、次の成功への足がかりとして可視化し、チームで活かす姿勢です。
失敗は、未来を変える最も確かな情報資源なのです。
文責:田辺顕
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