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ハラスメント防止と心理的安全性の確保

パワハラ(パワーハラスメント)、セクハラ(セクシュアルハラスメント)、マタハラ(マタニティハラスメント)といった職場のハラスメントに関する相談件数は、厚生労働省の調査でも年々増加傾向にあります。実際に労働局への申告件数は過去最高を更新し続け、もはや「どの企業でも起こりうるリスク」として経営課題に位置づけられています。

さらに近年は、SNSや口コミサイトによる情報拡散スピードが速まり、社内での一言や対応が瞬時に外部へと広がるケースも少なくありません。たとえば、上司が部下を叱責したシーンが一部切り取られて拡散され、「ブラック企業」とレッテルを貼られてしまう事例も現実に起きています。いまや 「叱り方ひとつでブラック扱いされる」時代 と言っても過言ではありません。

一方で、こうした背景を受けて企業が新たに注目しているのが 「心理的安全性」 です。これは、社員が安心して意見やアイデアを発言できる状態を指し、Googleの研究でも「高パフォーマンスチームに共通する条件」として注目されました。心理的安全性が高い組織では、社員が萎縮することなく自由に発言でき、イノベーションが生まれやすいだけでなく、ハラスメントの芽を早期に防ぐことにもつながります。

結果として、心理的安全性を高めることは 社員エンゲージメントの向上(働きがい・モチベーションの強化)や 離職防止 に直結します。逆にこれを怠れば、社員は不安や不満を抱えやすくなり、優秀な人材が流出する大きなリスクとなりかねません。

なぜ「心理的安全性」が重要なのか

心理的安全性が欠けている職場では、表面的には「大きなトラブルがないように見える」こともあります。しかしその裏では、社員が萎縮し、以下のような深刻な問題が起こりやすくなります。

部下がミスを隠すによる業務リスクの増大

「叱責されるのではないか」「評価が下がるのではないか」という恐怖から、社員はミスや問題点を報告せず、結果的に大きな事故やクレームへと発展するリスクが高まります。製造業での品質不正や、サービス業での顧客トラブルなど、重大な不祥事の多くは"隠蔽"から始まっていることが少なくありません。

意見が出ないことによるイノベーションの停滞

「どうせ聞いてもらえない」「反論したら煙たがられる」という雰囲気では、社員は発言を控え、会議が"形だけ"のものになってしまいます。本来であれば新しいアイデアや改善提案につながるはずの声が封じられることで、組織の成長スピードは鈍化します。Googleの「プロジェクト・アリストテレス」でも、心理的安全性の高さがイノベーションに直結することが実証されています。

不満が鬱積によるメンタル不調や離職

小さな疑問や不満を気軽に話せない環境では、社員はストレスを抱え込みやすくなります。その結果、心身の不調につながり、休職や離職に発展するケースも増加します。特に近年は「転職が一般化」しており、心理的安全性が低い職場は優秀な人材から見放されやすいのが現実です。

逆に、心理的安全性が高い職場では状況は一変します。社員は安心して課題を共有でき、失敗も学びの機会として扱われます。その結果、挑戦や学びが活発化し、チーム全体のパフォーマンスが向上します。さらに、社員同士の信頼関係が強まることで、チームの結束力やモチベーションも高まり、結果的に企業の競争力強化へとつながります。

多くの研究でも、心理的安全性が高い組織はそうでない組織に比べて 生産性・創造性・定着率のすべてで優位にあることが示されており、今や「働きやすさ」や「福利厚生」の枠を超えた、経営の根幹に関わるテーマとなっています。

ハラスメント防止と心理的安全性の両立ポイント

1. 指導とハラスメントの境界を明確にする

事実と行動に基づいた指摘は、組織の成長や社員の育成に欠かせません。しかし、人格否定や感情的な叱責は、瞬時にハラスメントに転じてしまいます。例えば「この資料は誤字が多いね、再確認を徹底しよう」というフィードバックは適切ですが、「君はいつもだらしない」といった発言は即アウトです。境界線を曖昧にしないためには、マネジメント研修やケーススタディ を通じて具体的な事例を学び、現場で活用できる知識として浸透させることが効果的です。

2. 叱るより対話を重視する

一方的に叱責しても、社員が萎縮してしまい改善行動にはつながりません。むしろ「どう改善できると思う?」「次はどう工夫したらうまくいきそう?」と問いかけ、本人に考えさせるスタイルが有効です。自分で答えを導く経験は、学びの定着や主体性の強化につながります。世代を問わず有効であり、特に若手社員やZ世代の人材にとっては「自分の意見を尊重された」と感じられる重要な要素になります。

3. 日常的な承認・感謝を組み込む

心理的安全性は、注意や指摘だけでは育ちません。小さな成功や努力を認め、言葉や行動で伝えることが必要です。たとえば「資料のまとめ方がわかりやすかった」「サポートありがとう」といった短い一言でも十分です。承認の習慣が職場に根付くと、社員は安心して挑戦できるようになり、ミスを恐れず意見を出す土台が整います。「注意7割、承認3割」ではなく「承認7割、注意3割」の意識が理想的です。

4. 個人特性を踏まえた接し方をする

同じ言葉でも、人によって受け取り方は異なります。たとえば、率直な指摘を前向きに受け止める人もいれば、繊細に反応してモチベーションを失う人もいます。こうした差を理解するには、性格特性や価値観を把握するツール(適性検査やサーベイ) を活用するのも有効です。個人特性を踏まえて「この人には具体例を示して伝えよう」「この人にはまず共感を示そう」と工夫することで、誤解や反発を防ぎ、建設的なコミュニケーションが実現します。

適性検査を活用したハラスメント防止策

適性検査によって社員一人ひとりの性格傾向や行動特性を把握することで、表面的なやり取りだけでは見えにくいリスクを事前に察知することができます。その結果、人事や管理職は「感覚」や「思い込み」に頼らず、客観的なデータに基づいたマネジメントを行えるようになります。具体的には以下のような取り組みが可能です。

叱り方の相性を知る

同じ言葉でも、相手のタイプによって受け取り方は大きく異なります。自己肯定感が低いタイプには「まず肯定から入り、改善点を伝える」アプローチが有効であり、逆に主張が強いタイプには「感情的にならず、論理的に説明する」スタイルが適しています。適性検査によって社員の特性を把握しておけば、相性に合わせた指導スタイルを選択でき、不要な摩擦や誤解を防ぐことができます。

リーダー適性の把握

管理職やリーダーは、部下への接し方に偏りが出やすく、その偏りがハラスメントリスクにつながることがあります。例えば「成果重視型で細かい配慮が苦手なタイプ」や「感情に左右されやすいタイプ」などです。適性検査を通じてこうした傾向を早期に把握することで、必要な研修やフォローをピンポイントで行い、マネジメントスキルの底上げにつなげることが可能です。

フォロー体制の強化

ストレス耐性が低い社員や、他者からの言葉を過敏に受け止めやすい社員を早期に把握しておくことで、トラブルが起きる前にフォローを入れることができます。たとえば、定期的な1on1や相談機会を増やしたり、信頼できるメンターをつけたりといったサポート策を講じることで、ハラスメントリスクが高まる状況を未然に回避することが可能です。

まとめ

企業のハラスメント防止は、単に「やってはいけない行為を禁止する」ことにとどまりません。

むしろ、社員一人ひとりが安心して意見を言い、挑戦できる 心理的安全性の高い文化 をどう築くかが、離職防止や人材定着、さらには組織の成長に直結します。

その実現のためには、適性検査を活用して 「叱り方・指導の最適化」を図ることが有効です。データに基づくマネジメントは、公平性と納得感を高めると同時に、職場に余計な摩擦を生まない土壌づくりにつながります。

ハラスメント防止は「義務」ではなく、健全な職場文化を育むための投資です。これを戦略的に取り入れることこそが、これからの人事に求められる視点だと言えるでしょう。

文責:田辺顕

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