上司が部下に怒るのはなぜか?~感情ではなく「原因」に向き合うことが、管理職に求められるマネジメント~
管理職として仕事をしていると、多くの人が一度はこのような経験をするのではないでしょうか。
「何度説明しても同じミスを繰り返してしまう。」「なぜ優先順位を考えて行動できないのだろう。」「自分ならすぐに終わる仕事なのに、なぜここまで時間がかかるのだろう。」
部下の仕事ぶりを見ていると、ついイライラしてしまうことがあります。
責任ある立場になればなるほど、チーム全体の成果や納期、品質に対するプレッシャーも大きくなります。そのため、部下の行動が期待通りでないと、「もっとしっかりしてほしい」「なぜできないのか」という感情が生まれることは決して珍しいことではありません。
しかし、その感情のまま指導してしまうと、部下の成長につながらないばかりか、信頼関係を損ねてしまう可能性があります。
管理職に求められるのは、感情を抑え込むことではなく、感情の背景にある原因を冷静に分析することです。
「やらない」のか、「できない」のかを見極める
部下に対してイライラしたとき、まず考えたいのが、「本人はやろうとしていないのか、それともできないのか」という点です。
一見すると同じ結果に見えても、その背景にはまったく異なる理由があります。
例えば、
- 仕事の目的を十分に理解していない
- 業務の進め方が分からない
- 優先順位を整理できない
- 判断に自信が持てず行動できない
- 困っていても相談できない
など、本人なりの事情が隠れていることも少なくありません。
もし「できない」ことが原因であるにもかかわらず、「やる気がない」と決めつけてしまえば、本来解決できたはずの問題も改善することは難しくなります。
管理職は、結果だけを見るのではなく、その結果に至るプロセスを理解する姿勢が重要です。
イライラは「期待」があるからこそ生まれる
部下に対するイライラは、多くの場合、「期待」の裏返しでもあります。
「もっとできるはずだ。」「このくらいは理解してくれると思っていた。」「次は成長していると思っていた。」
このような期待があるからこそ、その期待とのギャップに感情が動かされるのです。
しかし、ここで注意したいのは、その期待は本当に部下の現在の能力や経験に見合ったものだったのかという視点です。
期待を持つことは大切ですが、その期待が管理職自身の基準だけで設定されている場合、部下との認識のズレが大きくなってしまいます。
「自分ならできる」は育成の基準にならない
多くの管理職は、プレイヤーとして成果を上げた経験を持っています。
だからこそ、「自分ならこうする。」「自分は新人の頃でもできていた。」という考え方になりがちです。
しかし、部下は管理職本人ではありません。
経験も違えば、知識も違う、得意なことも苦手なことも違います。
さらに、仕事への価値観や成長スピードも一人ひとり異なります。
自分を基準に考え続けると、「なぜできないのか」という視点ばかりが強くなり、「どうすればできるようになるのか」という本来の育成視点を見失ってしまいます。
感情ではなく「事実」を見る
イライラしているときほど、人は主観的な判断をしてしまいます。
そのため、一度立ち止まり、
- 実際に何が起きたのか
- どこでつまずいたのか
- 必要な知識や経験は足りていたのか
という事実を整理することが大切です。
例えば、「仕事が遅い」という印象だけで終わらせるのではなく、
- 作業時間は適切だったのか
- 指示内容は明確だったのか
- 他の業務を抱えていなかったか
上記のことを確認することで、改善方法も見えてきます。
管理職に求められるのは、感情で評価することではなく、事実をもとに判断する姿勢です。
管理職の役割は「答えを教える人」ではない
部下育成では、答えをすべて教えてしまうことが正解ではありません。
重要なのは、「どう考えれば答えにたどり着けるのか」を伝えることです。
例えば、
- なぜそう判断したのか
- 他に方法はなかったのか
- 次に同じ場面が来たらどうするか
こうした問いかけを繰り返すことで、部下自身が考える力を身につけていきます。
短期的には時間がかかるように感じても、長期的には自立した人材を育てることにつながります。
管理職もかつては「教わる側」だった
管理職になると、どうしても「教える立場」であることを意識しがちです。
しかし、自分自身も新人の頃は、仕事が思うようにできず、先輩に何度も指摘され、失敗を繰り返しながら成長してきたはずです。
その経験を思い出すことで、部下への接し方も変わってきます。
成長とは、一度の指導で実現するものではありません。
小さな失敗と改善を繰り返しながら、少しずつ積み重ねていくものです。
まとめ
部下に対してイライラすることは、管理職であれば誰にでも起こり得る感情です。
しかし、その感情をそのままぶつけてしまうと、部下の成長を妨げるだけでなく、チーム全体の雰囲気にも影響を与えてしまいます。
だからこそ重要なのは、
- 「やらない」のか「できない」のかを見極めること
- 自分の基準だけで判断しないこと
- 感情ではなく事実を見ること
- 部下が考え、成長できる環境をつくること
です。
管理職の仕事は、自分一人で成果を出すことではありません。
部下が成長し、自ら成果を生み出せるよう支援することが、本来の役割と言えるでしょう。
イライラしたときこそ、一歩立ち止まり、「なぜこのような行動になったのか」を考えてみる。その冷静な姿勢こそが、信頼される管理職への第一歩ではないでしょうか。
文責:田辺顕
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