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「めんどくさい」が合図?シルバー人材の認知低下をどうするか ~シニア社員との向き合い方を考える~

年金だけでは生活を支えきれない時代、60代・70代でも働き続けるシニアが増えています。企業でも「シニアアドバイザー」「再雇用スタッフ」として、豊富な経験を活かしてもらう動きが一般的になりました。

単純作業やルーチン業務など、本人の体力や経験に応じた働き方も多様化しています。一方で、シニア社員を受け入れる企業には「健康面のケア」も重要な課題として浮上しています。その中でも、最も見過ごせないのが認知機能の低下です。

認知機能低下のサイン

認知症の前段階といわれる「MCI(軽度認知障害)」になると、海馬の働きが弱まって記憶力が低下すると言われます。また、前頭葉の機能低下が起きるケースがあることをご存じでしょうか。

前頭葉は、おでこの奥にある「意欲を生み出す脳の司令塔」。

ここが衰えてくると、「意欲の低下」として日常行動に表れます。その代表的なサインが「めんどくさい」という言葉が増えること。

これまで前向きに業務へ取り組んでいた社員が、「もういいや」「やる気が出ない」「面倒だ」と頻繁に言い出したら、それは単なる気分の問題ではなく、認知機能のグレーゾーン入り口かもしれません。

人事ができるサポート対応

シニア人材の活躍が広がる一方で、年齢に伴う心身の変化にどのように向き合うかは、人事にとって重要なテーマです。もしシニア社員に「認知症の疑い」が見られる場合、人事には単なる労務管理ではなく、本人の尊厳を守りながら支援につなぐ調整役としての対応が求められます。

この際、人事は本人だけで抱え込ませるのではなく、家族や専門医と連携しながら、安心して働き続けられる環境づくりを支援することが重要です。

1.まずは面談で状況を把握する

体調や生活リズムの変化、業務上のミスや判断の遅れなど、日常業務で気になる点を丁寧に確認します。このとき大切なのは、決して「病気かどうか」を決めつけるのではなく、本人の困りごとや不安に耳を傾ける姿勢です。「支援のための対話」であることを明確にし、安心して話せる場をつくることが第一歩となります。

2.医療機関への受診を促す

本人の同意を前提に、企業の健康管理室や産業医、あるいは地域の認知症を判別できる専門外来などを紹介します。早期に専門的な見立てを受けることで、必要以上に不安を抱え込むことを防ぎ、適切な対応方針を検討しやすくなります。人事が「受診を強制する」のではなく、選択肢を提示する立場であることが重要です。

3.家族との連携

状況に応じて家族と連絡を取り、本人の生活状況や今後の働き方について情報を共有します。家族の理解と協力を得ることで、就業継続の可否や業務内容の調整について、より現実的な判断が可能になります。このプロセスでは、本人の意向を尊重しつつ、プライバシーへの配慮を徹底することが欠かせません。

4.就業上の配慮・配置転換

業務負荷の軽減、役割の見直し、サポート体制の強化などを検討し、本人の負担を減らしながら経験や知見を活かせる環境を整えます。適切な配置転換や業務調整を行うことで、本人の安心感が高まるだけでなく、周囲の社員や組織全体にとっても安定した職場運営につながります。

「健康管理」もキャリア支援の一部に

シニア社員の増加は、企業にとって貴重な人材の蓄積を意味します。その一方で、「健康のマネジメント」もキャリア支援の一部として位置づけることが重要です。"めんどくさい"という小さなサインを見逃さず、早期に気づき、寄り添うことが必要になります。

それが人事の新しい役割になりつつあります。

文責:田辺顕

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