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イニシアティブ、リーダーシップは体格や性格で決まるものではない!

企業の研修などで、リーダーシップを発揮しよう、イニシアティブを取ろうなどという話をすると、必ず次のように言う方がいます。
いわく「私はそういうタイプではないので...」と。言う方はたいてい小柄でいかにも小心そうな外見という場合が多いので、言われた私も何となく「そうですか」と流してしまいそうになります。しかし「いやいやちょっと待て」と自分に言い聞かせ、次のように返します。

「タイプって何ですか?見た目の話ですか?」と。すると相手はそうだと言う場合もありますし、いや性格的な話だという場合もあります。あらためて皆さんにお尋ねしましょう。この場合のタイプは何だと思われますか。

本来リーダーシップやイニシアティブの問題に関してその主体者の見た目や性格は全く関係ないはずです。ただリーダーシップに限定すれば、組織を鼓舞し元気付けていくことが求められますので見た感じのインパクトはそれなりの効果を演出します。同じことを言っても、日本人の平均的身長以下の人が言うのと180センチを越える大柄な人が言うのでは多少違うでしょう。いわゆる「押し出しのきく人」がリーダーに推薦されやすい所以です。

が、イニシアティブに関してはほとんど関係ないと思います。イニシアティブを発揮する人に求められることはその人の口から発せられる「新鮮で、独特で、説得力のある方針、指針、行動原理」といった概念であって、決してその人の見た目や性格はイニシアティブを発揮する上で大きな要素とならないはずです。余談ですが、私は、日本人がリーダーシップやイニシアティブと見た目の関係をある種固定化してしまった由縁は西郷隆盛の存在が大きいと思います。

言うまでもなく西郷は明治維新の功労者で政治家、軍人として偉大な足跡を残しました。尊皇攘夷や富国強兵というコンセプトにおいて周囲を引っ張り、維新の志士たちから厚く尊敬されました。そしてもちろん彼がリーダーとして人々から指示された理由はあくまでもその発言内容、行動内容に他なりません。しかし彼は当時としては珍しい180センチを越える大男であり、加えてあのギョロ目と太い眉です。容貌魁偉とまでは言いませんが相当なインパクトを与えたはずです。私が知る限り聖徳太子も源頼朝も織田信長も大男であったという史実は聞いたことがありませんので、多分西郷は日本史上初の大きなリーダーだったのではと推測されます。もしかすると彼以前の日本では大男は「ウドの大木」と揶揄されリーダーという見方から程遠い見られ方をされていたかもしれません。

しかし西郷以来日本人はリーダーのイメージに口数が少ない、堂々としている、大きい、つまりどっしりしているというものを加えました。そしてその発言や行動ではなくそういう泰然自若とした風貌の人をリーダーと見たがるようになったのではと思います。閑話休題、再度言いますがリーダーになることやイニシアティブを取ることに関して、ルックス、キャラクターは関係ありません。ですから、「そういうタイプではない」と言うことは、「そういうユニークな方針を出せない」ということになってしまいます。それは場合によっては「自分は無能である」と言うことになりかねません。

十数年前、ある食品卸会社でコンサルタントとして会議に出席した際、次のようなことがありました。
停滞した売上を伸ばすためにメンバー全員でいろいろと検討していたのですが、なかなか妙案が出てこないため会議は行き詰っていました。そこで、メンバーの一人が「顧客から得る情報を上手く加工して他の顧客にフィードバックすることで顧客増につなげることができるのでは」と口を開きました。私は情報を活用し顧客拡大につなげることは卸の営業戦略で充分可能性があると好意的に受け止め話を促そうとしましたが、他のベテラン営業マンたちは「そんなのおこがましいよ、お客さん(たいていはホテルの料理長や熟練した板前さんです)の方が料理に詳しいのだからわれわれみたいな搬入業者の言うことなんかに耳を貸さないだろう。」と否定的でした。

しかし発案した彼はひるまず一生懸命自説を披露したのです。彼いわく洋食の料理人さんは意外と和食や中華の流行食材や調理を知らないし、その逆もまた同じであり、どこどこの店でこういう新しいメニューを取り入れたと話すと興味深く聞いてくれる、いい料理人であればなおさらその傾向は強い、だから何百店もある顧客の許される範囲の情報を上手に整理して提示すれば、それだけで卸業者選定の際に有利になる、ということでした。その後、彼が熱心に主張したため、経営トップも含めその場のメンバーは彼の作戦を聞き入れ具体的な方法論の検討に入ったのです。もちろんその場のイニシアティブを取ったのは彼でした。

このエピソードの彼はお世辞にも立派な体躯とは言えず、多分平均よりかなり小さい体格だったと思います。顔立ちも平々凡々、眼鏡をかけていて髪形も没個性、二十代にも関わらず服装も地味でした。周りにいた四十を過ぎたおじさんたちの方がよほどダンディズムを感じさせました。
しかし、彼は壁にぶち当たった会議の中でイニシアティブ、主導権を握ったのです。
そう言えば、冒頭で記述した「私はそういうタイプではない」と言った人も彼と同じような外見だったような気がします。

組織を引っ張っていくためには大西郷のような風貌は必ずしも必要ないのです。

著:古波倉 正人→360サポーターズ
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